「世界の国 1位と最下位」(眞淳平)

「国際情勢」についての入門の一冊

「世界の国 1位と最下位」(眞淳平)
 岩波ジュニア新書

「国際情勢」を正しく理解するのは
難しいと感じます。
私は新聞に
毎日目を通しているのですが、
それだけでは一つ一つが
断片的に記憶されるに止まり、
それらが繋がっていかないのです。
中高生はもちろん、
大人である私たちも
こうした本を手に取り、
日頃新聞で得た知識を
体系的に整理し直す作業が
必要だと思うのです。

さて、本書の特徴の第一は、
そうした「国際情勢」を、
項目ごとのランキング形式で
紹介している点です。
これなら中高生も興味関心を持って
読み始められるでしょう。
面積や人口、
GDPや貧困率などの項目の
上位国と下位国を比較するだけでなく、
そうした現状が生まれた
歴史的背景や問題点にまで
本書は言及しています。

「第1章 面積」では、
アメリカの国土の広さの理由について、
独立以来の歴史を振り返り、
関係する国々に挑発を行い、
戦争に持ち込むことによって
勝ち取った部分が大きいことを
説明しています。
「アメリカはいざとなれば
 断固として戦争に踏み切り、
 その戦争に勝つことで
 発展してきた、という歴史は
 覚えておく必要がある」

太平洋戦争での我が国との関係や、
湾岸戦争・イラク戦争等を振り返ると、
まさにその通りです。

特徴の第二は、私たちの価値観に
揺さぶりをかけるような、
多角的な視点を提示している箇所が
豊富である点です。

「第6章 軍事力」で
それが顕著に表れています。
軍隊を持たない方が戦争を
避けられるという平和主義的な考えが
一般には存在します。
その一方で、世界の非武装国家を見ると、
リヒテンシュタインは
隣国スイスの軍隊頼み、
パナマはアメリカの介入によって
軍隊を強制解散、
コスタリカはアメリカとの
関係強化を図る等、
他国の軍隊に少なからず依存している
現実があるです。
難しい問題が多いのだと
改めて感じました。

ただし、多様な切り口で
世界情勢を解説している分、
一つ一つの項目での踏み込みは
浅いものになっている点は
やむを得ないでしょう。
ある程度の専門知識を
持った人にとっては
不満が残るかも知れませんが、
本書はあくまでも入門書なのです。

この本を読んで疑問に感じたことを、
さらに自分で調べる。
そのための一冊と考えるべきでしょう。
巻末の参考文献一覧を見て、
次の読書へと繋げていきたいものです。
中学校2年生に薦めたい一冊です。

※参考までに章立ての一覧を。
 第1章 面積
 第2章 人口
 第3章 GDP(国内総生産)
 第4章 税金
 第5章 軍事力
 第6章 石油・天然ガスの生産、輸出
 第7章 貧困率
 第8章 食糧自給率
 第9章 進学率

(2020.11.5)

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